音Logue 第9回はトラディショナル。
クラシックの時代についてお話しました。
ところでご存知の通り、「クラシック」とは「古典」と訳される言葉、正確にはClassical クラシカルですけど。
トラディショナル音楽の世界では、ベートーヴェン、モーツァルト、ハイドン達が活躍した時代、ウィーンが音楽の中心地だった頃、大体1720年〜1820年くらいの百年を「Classical Period (クラシック時代)」と呼びます。
1827年にベートーヴェンが亡くなるんだけど、学者の中にはこのウィーン古典派はこの年までとする説の人たちと、ベートーヴェンの作風的に1820年あたりまでとする説の人たちがいます。
興味を持ったら、図書館へGO!
Classicalの語源は、古代ギリシャ語やラテン語の芸術や文化に由来していて、様式や法則みたいなものを受け継いでるってことを意味していて、派生して「模範的な標準」とか、「伝統的」、あるいは「長期に渡って形成された」様式や形式という意味で使われているかな。
そういった意味では広く伝統音楽の事をクラシカルってジャンル分けするのも一理あるかもね。
ところで、このウィーン古典派の音楽家、モーツァルトや、ハイドン達が、当時から自分たちのやっている事を「クラシカル」なんて呼んでない。
むしろ、前時代のバロック音楽に比べたら、断然「モダン」なことをやっている訳で、使ってる楽器も違えば、編成も、音楽の手法も違う。
ウィーン古典派が確立した新しい音楽は沢山あって、例を挙げると、弦楽四重奏(String Quartet)、ソナタ形式、ロンド形式、協奏曲、交響曲などなど。
じゃ、このウィーンで活躍した(ハイドンはイギリスでも活躍したけど)「モダンな連中」を、一体どこのどいつがクラシック扱いしたかっていうと、まさにドイツのアカデミズム。
ブラームスを始め、古き良きウィーンの音楽の系譜を研究して、素晴しい伝統を今後の糧にしようというスローガンの下、ウィーンの業績をまとめたのです。
その時に「Classical」って区別したんだね。
前回のトラディショナル音Logueの時に聴いた、サロン音楽全盛、ラテン系パリとは一線を画す、まじめーなゲルマン系気質が伺えます。
「This is Music!」あ、ドイツ語か、「Das ist Musik!」と言わんばかりに、それまでの音楽の体系をしっかりと研究したんですね。
何かにつけてドイツとフランスって仲悪いのはこの頃からかと推測されます(笑)
うーん、ブログだけ読んでると、音Logueのトラディショナルの日は、随分堅苦しい雰囲気だぞって思われるかもしれない。
うーん、どうだろ。
講義の時はもっと面白いと思うんだけどなぁ。
どうだろ?
比較的ゆったりとしたムードが主流のバロック音楽が物静かに時々流れていたヨーロッパの街並み。
音楽よりも人の往来、自然の音のほうが遥かに大きかった日常。
想像してみてください。
その風景に突然、マシンガンのように強烈なサウンドで、かつ流れ星のテールのように音符が続くメロディ、目が覚めるような和音の連打。
モーツァルトの弾くピアノは、一瞬にして街中の人々の耳を奪ってしまったことでしょう。
まさにロックですよ。
今で言えば、B'z の松本さんが窓開けてマーシャル5000ワットで練習しているようなもんですよ。
その衝撃。それがロックです。
巻き髪のご婦人たちから口々に出てくる言葉が聞こえてくるようです。
「あの、鳥のようなカミナリのような嵐のような、この世のものとは思えない音楽を演奏しているのは一体、だれなのかしら?」
「まぁ、あの情熱的な楽器を弾く少年は一体、だれなのかしら?」
「あぁ、耳だけではなく、わたくしの心を奪う、あの楽器は、なんというの?」
(↑でた!勝手に想像して台詞シリーズ!)
天下一のプロモーター、レオポルド(父)もきっと鼻高々に息子アマデウスの演奏会を仕込めたことでしょうな。
バロックの時代っていうのは音楽の役割は式典や祝賀行事が主で、庶民が音楽を聴くために集まるってことはなかった。
音楽が本格的に民衆のものになったのはこの時代から。
モーツァルトもベートーヴェンもピアノの名手。
ハイドンは元々歌手だった。
演奏家であって作曲家であり、教育者でもある。
そこらへん、中途半端じゃない。
本当の意味で音楽の専門家なんだけど、彼らを支えてくれる環境=音楽を聴く聴衆のニーズが高まってこその存在。
だから歴史が彼らを必要としたのだと思う。
ところで、この頃主なコンサート会場になったのは宮廷。お城。
お金持ちの伯爵公爵たちは宮廷楽団を抱えて、その演奏がどれだけ凄いかを競った。
高い演奏能力を求めるのはもちろんだけど、楽器の音色がちゃんと聴こえるか、会場の建築にもこだわった。
音楽がちゃんと響くように設計させた。
音楽の為に建築デザインも研究されたのです。
だからウィーン以後のお城では当たり前のように演奏会が想定されている。
凄いよね。
教室では、ポルトガルのお城で行なわれたベルリン・フィルのコンサート、モーツァルトのピアノ・コンチェルト(協奏曲)を堪能しました。
自然残響(ナチュラル・リバーブ)が美しいのなんのって。
こういう音楽の奥深い一面を味わえるのも、オーケストラを観る、聴く楽しみですね。
basskie